【レポート】 Renovation Project vol.3

2008年5月11日、まさに今リノベーションの進むBankART Studio NYKにおいて、BankART school 2007年度 「ラジカルできちんとした建築構造と防災」連動企画"Renovation Project vol.3"が開催されました。


前半は、改修にあたり考慮された法規・構造等の観点から、曽我部昌史ら改修に携わるそれぞれの担当者によるレクチャー。その後、現場の見学会を挟み、質疑応答が行われました。

前半の内容の要旨は次のとおり。歴史を重ねてきた建築のリノベーションを行うことの難しさと、それをどのように乗り越えてきたかということについての、専門的な見地からのレクチャーです。
  • 法規(曽我部昌史)
改修の概要
・階段を新設(二方向避難)
・エレベーターを新設
・非常用進入口を設ける(3階建であることから必要)
・排煙設備を3階に新設
1953年に建てられたこの建築は、今日までの法令の改正により現在の法規(現行法)に対応しない既存不適格にあたる。このため、現行法に適合するための法規への対応が計画の大半を占めたという。例えば、階段の新設については建物と一体にならないよう独立したものとして計画する、エレベーターシャフトの設置についても壁に穴をあけてはならないため、既存の壁面の開口部を利用するといったもの。
  • 構造(金箱温春)
BankART Studio NYKの建築構造の概要が示され、先の法規対応に関する構造上の補足が加えられた。
この建築の構造上の特徴として、まずフラットスラブ構造であることが挙げられ、地震力は全て壁で負担されること(つまり壁の量が必要となる)、倉庫であり積載荷重が大きいことなどが説明された。改修では耐震性を低下させる改修は行えないことから、壁の開口はとれないという。
  • 防火(長谷見雄二)
BankART Studio NYKは今後、横浜トリエンナーレの会場として使用されることなどから、改修にあたり火事などの災害時に安全に避難できることが求められる。避難については仕様を満たす設計を行えばよいが、1953年竣工のこの建築では法令に適合することが難しい。そこで、煙などが人の身長(1.8m)に降下するまでに避難できることを検証する、近年導入された検証法を用いて対応することとなった。元々倉庫であったこの建築は煙が天井から降下するまでに時間がかかるため、避難には有効である。

レクチャー・シンポジウムの中で会場からの視線を一身に集めていたのが、関西大学で建築の保存改修の研究を進める西澤英和 准教授でしょう。「既存不適格は「宝」として考えるべき」「財だから、使ってなんぼ。ちゃんと資産運用として考えんと」「建築を学ぶ学生は、文化と歴史のことをちゃんとやらんと」――これらの発言はほんのごく一部ですが、その中で今日のリノベーション・文化財礼賛に対する注意を促し、文化や未来も含めた歴史といった広い視野の中で歴史的建造物を捉えることの重要性が説かれました。


・写真レポートはこちら
・BankART Studio NYK内のパブはBankART Pub は BankART1929 Yokohamaに移転営業しています。[http://bankart1929.seesaa.net/article/96194489.html]

・改修工事以降の関連スケジュールは次のとおりです。
□□今後のNYK関連スケジュール□□
改修工事 → 2008年4 - 7月中旬
横トリ内装工事+搬入 → 2008年7月21日 - 9月12日
横浜トリエンナーレ2008 → 2008年9月13日 - 11月30日
作品搬出+内装撤去復旧工事 → 2008年12月1日 - 12月末
NYK再活動(1 - 3F/約3,000平米) → 2008年12月末 -
[http://www.bankart1929.com/whatsnew/index.htmlより]

<2008.8.04>
・関連記事:
【写真レポート】 BankART Studio NYK 一部改装完了
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・関連情報
・BankART Studio NYK (建築紹介)
Renovation Project vol.3 (リリース・告知)



[ posted by ida-10 ]