トリエンナーレ・メイン会場「新港ピア」建設中

今秋開催される横浜トリエンナーレの会場の一つとなる「新港ピア」(新港ふ頭仮設会場)が現在建設中です.今回の記事では,この建物について紹介します(最後に建設状況の写真レポートあり).


建設中の新港ピア

赤レンガ倉庫などがある新港ふ頭(新港地区)の海側には,二本の岸壁が海に向かって伸びています.(海に向かって)右側の岸壁には海上保安庁関連の施設があり,今回取り上げる新港ピアは,もう一方の左側の岸壁に建設されています.こちらの岸壁には,もともと新港客船ターミナルがあったのですが,市の創造都市政策の一環で「新港客船ターミナル映像文化施設」として2005年から2006年にかけて整備・改修され,東京芸術大学大学院映像研究科新港校舎が入居しています.新港ピアはこの施設に隣接するかたちで建設されています.






新港ピアの完成予想図は次の様になっています(以下,新港ピアについての引用はこちらより).



右側の四つの箱からなるのが新港ピアで,左奥のが新港客船ターミナル映像文化施設ですね.手前に見える,白い施設は既に現地で見ることができエントランスのようにも見えますが,今回の整備に会わせて建設されたものか,以前からあったものかは不明.

新港ピアの整備期間,施設概要,設計者については次の通り.
【整備期間】 20 年4 月~8 月
【施設概要】鉄骨造平屋建、延床面積約4,400 ㎡
【設計】㈱松本陽一設計事務所

ちなみに,客船ターミナルの改修の実施設計を行ったのは日生建築計画研究所.改修後の様子については,こちらに写真があります.この写真からはよく分かりませんが,もともとの客船ターミナルは昭和4年の建物だそうです.改修完成時の横浜市長の会見でそのことが触れられているので引用してみましょう(こちらから.改修にかかった費用の話しもあります).
記者 この客船ターミナルを直接知らないのですが、これ自体は何か歴史的な建物なのですか。
市長 昭和4年から(の建物です)。
記者 結構古いですね。
市長 かつては横浜のメインターミナルとして、長い間使われていた歴史があります。
記者 現在の建物は、昭和4年にできたものが大枠で残っているのですか。
(事務局) そうです、それを大幅に改築しました。



さて,新港ピアに話しを戻しますと,この建物がトリエンナーレで使用される時の会場空間構成は西沢立衛建築設計事務所が担当するそうです.トリエンナーレの主催団体の一つである国際交流基金が発行している機関誌「をちこち」(no.20)に掲載された,水沢勉(横浜トリエンナーレ2008総合ディレクター)と西沢さんの対談ではこの会場について次のように語られています.
西沢:今回,横浜トリエンナーレの仮設の建物は,すごくいい場所にできますね.
水沢 新港ふ頭で,馬車道通の軸線ですね.文化的な施設が都市の軸線上にできるのはすごく意味があると思います.
西沢 関内の道路はいわばグリッド状にはりめぐらされた格子状道路網ですが,実際はそれだけではありませんね.馬車道通のようなグリッドに収まらない,強烈なキャラクターをもった通りもある.馬車道には歴史があって,そこから先に行くと新港ふ頭,つまり新しいふ頭がある(建設は明治時代後期から大正時代).その先端に建つ建物ですから非常に重要なポジションに建つ建物といえます.フランス人だったら大変特別な建築を建てるような所ですね.
水沢 確かに関内から馬車道通を通って,一気に海に向かっていくわけですから,ある意味で,それが横浜の都市の形成に関わる,一番明瞭な軸線ですね.新港ふ頭はトリエンナーレのあと,2009年には「開港150周年記念事業」の会場になりますが,そのあとはさらに開発が進むでしょう.

この後,西沢さんは横浜のまちづくりの中で,海際がパブリックな場所として市民に開放されてきた流れについて語っています.かなり時代をさかのぼる山下公園の整備から,みなとみらいの整備まで.前回のトリエンナーレの会場が置かれた山下ふ頭も普段は一般人は立ち入れない場所でしたし,今回の岸壁もフェンスで仕切られていて入ることができない場所です.
馬車道と新港ピアの位置関係は是非,こちらの地図で確かめて見て下さい.



☆写真レポート
2008年6月初旬の,新港ピアの建設状況についての写真レポート=「新港ピア・建設中」(写真20枚)






☆関連
・同トリエンナーレでは,BankART Studio NYKも会場となります.それに向けてのリノベーションについて取り上げた記事=【レポート】 Renovation Project vol.3
・追記 [ 6.12.2008 ]:トリエンナーレの公式blogに,この会場についての紹介記事がアップされた=こちら




[ posted by jun ]