【レポート】創造空間9001で『ヨコハマ路地博'08』開催

6月22日(日)、旧桜木町駅舎「創造空間9001」にて『ヨコハマ路地博'08』が開催されました。その名前からは内容が想像できない『ヨコハマ路地博'08』とはどんなイベントだったのか。今回はその様子をレポートします。


Speakers vibes(ウェアブランド)、flicker(雑誌)、mm films(BMX映像)というジャンルの異なる3団体の新作発表/販売を中心に行われる合同展示会。3団体のブース以外にも、普段親交/つながりのある ARTISTやSHOP、EVENTなどの出展ブースも設置されるので、ヨコハマを中心に活動する動きやつながりが目に見え、少なくともひとつは、新しい情報や出会いを持ち帰ることが出来るでしょう。また、当日はBMX DVD『on the low』の上映、DVD出演ライダーによるショーケース、ゆかりあるDJ/アーティストによるパフォーマンス、ライブペインティングなど、見所満載です!

以上は前回の紹介記事からの再度の引用ですが、会場では物販あり、DJあり、BMXパフォーマンスあり、ライブペイントあり・・・と、日々横浜を中心にして行われている様々な活動が会場に濃縮され、熱気に包まれていました。


会場で流されていた、mm filmsのDVD『ON THE LOW』(2008年4月リリース)のトレーラー。横浜を舞台に撮影されています。


会場の奥の壁面を使って行われたライブペイント。15時頃の様子。

イベント終了前、20時頃のライブペイントの様子。

イベント終盤、タカラダミチノブのDJ。


これらの展示、物販、ライブなどが一堂に会するため、それぞれの展示等の方法も異なれば時間的なスパンも異なってきます。例えば、キムチを売る前でライブが行われ、その弾き語りの向こうでは数時間前から絵(ライブペイント)が黙々と描かれている・・・といったところでしょうか。それぞれの個性とそれらのミックス具合が印象的でした。

これらのインディペンデント的な個々の活動は、興味を持たないでいると普段はなかなか目にすることのないものでしょう。それが桜木町駅を降りてすぐの、しかも横浜市の関わる施設である「創造空間9001」で行われたことには、多くの人の目に付くというだけではなく、意外性を持って受け入れられたのではないでしょうか。

そうした、今回のイベントの開催に至る経緯や意図などに関する話は、今回の路地博'08に併せて参加団体の1つflickerによって発行された"POST-IT! vol.01"での主催者らによる座談会の中で語られています。その一部を紹介します。

「ある部分のヨコハマ」ってのは確実に紹介出来ると思うんだ。それがしかもイベンター的な寄せ集めの「ある部分」じゃなくてさ、それぞれの団体だったりお店、 DJなりが人間的に顔を合わせてつながってるっていう範囲の「ある部分」をさ。そういうのを知ってもらえたり、見て感じてもらえたり、活用してもらえたり、今後参加、交じっていくきっかけになれたらいいよね。("POST-IT!" ヨコハマ路地博'08開催記念号 vol.01より)


また、会場で配られた当日用のフライヤーには、今回のイベントに関係したお店や活動の場,横浜のBMXスポットなどが記された『ハマ路地MAP 08』が掲載されています。個々の活動が地図上で並列に可視化された様子は、上述の"POST-IT!"で語られているように、活動への参加や交流を促す仕掛けとしても捉えられるように思われます。(※試しにその地図を以下のGoogleマップ上に移してみました)



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参考
ヨコハマ路地博'08 公式サイト


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横浜のアートの現場blog

現在横浜市で行われている創造都市政策関連のアート事業は,お客さんとして展示されている作品を見て終わりというよりも,それらが,フィールドとしている都市・地域と関わりを持ちながら,一つの活動として展開していくプロセスに注目していくと,より興味を惹かれる多様な側面が見えてくるように思えます.そういう意味では,個々の企画(お客さんの目に触れる場面とその企画プロセスを含む),個々の時間と場所(と人々)を繋いでいく次元,つまりメディア上での表現や情報発信が大きな役割を担えるのではないでしょうか.今回の記事では,そのようなアート関連の活動のメディア,特に,比較的静的なメインのオフィシャルサイトではなくて,現場のスタッフによって更新されていると思われるblogをいくつか紹介します.

黄金町バザール スタッフブログ

一つ目は「黄金町バザール」のスタッフブログです.こちらの熱心な更新を見ていて,この記事を書こうと思ったブログです.サイト紹介は次のようになっています.
2008年秋、黄金町がバザールになります!本番に向かって猛ダッシュする黄金町の毎日を、バザールスタッフがお届けします。

秋の開催に向けてどのような動きが日々あるのかのレポートと,写真付きで周囲の街の様子などを記述した日記が並列的にアップされています.近隣の他の活動の現場に足を伸ばしている日常が分かるのもいいですね.色々な活動が物理的にも人的にも,こういう風に近接しているのは,これらの活動が持っているポテンシャルだと思うし,活動のフィールドである地域にどういう可能性があるのか,というかそれ以前の話として,そこがどのような街なのか知らせることは重要なんでしょう.そういうものは,一人の人の私的な視点を通してでも見えてくると思います.
ちょっとだけ気になったのは,せっかく写真を色々使われているのだから,もうちょっと大きなサイズで配置されればいいのに,ということ(クリックすれば大きなものも見られますが).でも,これは使用されてるblogのシステムの制約かもしれません.




BankART1929 BLOG

割と最近に開設された,バンカートのblogです.blog紹介は以下のようになっています.
BankART1929のブログです。このブログではBankART1929で開催される展覧会やその他の活動のリポートを発信していきます。

まさに多様な側面を持つ活動体であるバンカートが,関連する様々なイベントの告知に中心的に用いてきたメディアは,長い間,登録制のML(メーリングリスト)だったと思うのですが,そこにblogが加わました.さっそく購読しはじめたのですが,「ぴおシティ延長」という記事(6/7)なんかは,blogだからこその現場の動きの感じられる速報レポートになっていました.これは,5月に行われた「Landmark Project 3 国道16号線を越えろ! ←野毛にいこう」という企画で,テンポラリーな会場の1つとなった,桜木町駅前のぴおシティの空き店舗のスペースが,継続使用されることになったという話しです.そして,その何個かあとの「横濱モボモガを探せ!again」という記事(6/17)では,早速そのスペースでの展示が始まったとレポートされています.他にも,バンカートの企画以外の重要な活動の1つだという,バンカート・スクールの個々の講座のレポートもあります.



トリエンナーレ,ザキ座,アートチャンネル


黄金町バザールと同時期,今秋開催される横浜トリエンナーレ.先に取り上げた二つの活動ほど,地域との距離が近かったり,そこで活動している人の顔が見えてくるようなイベントではないですが,こちらにも関連のblogもあります=→ 横浜トリエンナーレ2008ブログ

アート系ではありませんが,6月に行われるイベントの紹介記事(こちら)で,少し紹介した「ザキ座」にもスタッフブログがあります=→ “ザキ座”な日々.まちづくり系の活動なだけあって,地域にあるお店を1つずつレポートしていく記事には力が入っています.

最後に,これはblogではないですが,横浜のアート関連の気になる(+あまり知られてなさそうな)メディアということで,→ ヨコハマ・アートチャンネルを紹介.「芸術文化に関する公演やイベントなどの記録、アーティストの素顔、芸術文化施設の紹介など、様々な側面から横浜のアートシーンを動画で紹介していきます」とのこと.アートログというコーナーでは,バンカートや黄金町バザール関連のイベントも動画で紹介されていますね.




※他にも色々とあるとおもいますが,以上5件紹介してみました.こういうサイトもあるよ,とかありましたら教えてください(連絡先はこちら).どういう位置づけなり感覚で,どういう人達によって更新されているか,それぞれの更新者の方などに聞いてもみたいですね.自分たちの活動との関連付ければ,こういう風にそれぞれの活動の現場にいる人が情報発信しているなかで,それとはまた別の次元でのメディアには,どういう形の活動・内容があるのか・・・?って話しにもなってくるかもしれません.
※注:記事冒頭で横浜市との関連から語り始めましたが,今回紹介しているそれぞれの活動は,市が直接何かをやっているわけではもちろんなく,ある程度の,あるいは,かなりの独立性を持つものだと思います(経済的な側面や活動の方向性への影響力などもっと丁寧に見ていく必要はありますが).ここら辺の事は,現在の横浜の動きを捉え,このサイトをやっていく中でも結構問題になるところでして,つい便利なくくりとして,創造都市の,とか,横浜市の,とかいうような言葉を使ってしまいますが,その政策をそのまま支持しているわけではないですし,そういう言葉をそのまま飲み込んでしまうのなら,メディアなんてやる必要もないと思ってはいます.という風に,興味の関心は現場での動きにあるのですが,横浜市が何もしていないというわけでは当然なく,それはそれでその実体やをちゃんと記述し評価していくべきなのでしょう.



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北仲通再開発/遠藤於菟についての記事

北仲通北地区(A地区)再開発 080618

上の写真は,ホテルに関する記事(「横浜・三つのホテル計画」)で,森ビルによって再開発が行われると紹介した北仲通北地区の2008年6月18日現在の様子です.もともとの帝蚕倉庫の敷地内に建っていた建物の解体がかなり進行して,本当にここに超高層ビルを含む新しい建物が建つんだということが,現実のこととして少し想像できるようになってきた気がします.
この再開発では,帝蚕倉庫の建物の中で,上の写真真ん中に見えているレンガのストライプを帯びた倉庫(同じデザインで三つあった内の二つはほぼ解体が完了)と,ここ数年北仲BRICKとして使われてきた建物(下の写真)が「歴史的建造物」だということで,保存され活用されます.
(旧)帝蚕倉庫=(旧?)北仲Brick

これらの建物の設計者は,遠藤於菟[おと]と言います.今回,この建築家についての座談会記事が,有隣堂(横浜・伊勢佐木町に本店がある書店)のPR誌「有鄰」(第487号)に掲載されました.「有鄰」は有隣堂に行けば(最新号が)無料で手に入れることができますし,ウェブサイトでも見ることができます(こちら).「近代建築の先駆者 遠藤於菟と横浜」と題された座談会の出席者は,横浜の近代建築について研究してきた二人の建築史家(堀勇良・吉田鋼市)に,横浜市の都市デザイン室の室長だった人物(北沢猛)と有隣堂の社長(松信裕,余談ですが「有鄰」に毎回掲載される座談会には,社長が出席して発言している場合が結構多い).



さて,座談会の中身ですが,横浜における近代建築という話しからはじまり,遠藤於菟がどのように横浜と関わりを持っていったのかが語られ,彼が設計した建物が紹介されています.その中には,現在も日本大通にある三井物産ビルや,今まさにその行く末が問題になっている帝蚕倉庫の建物,そして生糸検査所などが出てきます.帝蚕倉庫の建物はもともと,生糸検査所の付属倉庫として同じデザインで隣接して建てられたわけで,生糸検査所の建物こそが言ってみれば「主役」でして,その偉容が「キーケン」として市民に親しまれたという話しが座談会中にも出てきますが,既に取り壊されて,跡地に建つ役所の概観にその姿が再現されているというかたち.その再現も「保存」と言われる訳ですが,そのあたりの話しや,それでは今回の帝蚕倉庫の保存がどのようなかたちになるのか,についても話題にされています.ということで,是非読んでみてください.もう一度リンクをはっておきます=こちら.こういう話し・歴史があって,さて再開発はどうなるのかな,と思いをはせてもらえば,と思います.・・・といっても,もう(この場所が)どうなるのかは全部決まってるんでしょ? ってツッコミもあるでしょうが.

ちなみに,北仲BRICKと一緒に北仲WHITEとして活用されていた建物は,冒頭の写真でも分かるように解体が始まっています.こちらは,遠藤の設計した建物ではないのですが,昭和三年に完成した古い建物ではありました.同じ敷地内にあった,みなとみらいの動く歩道や汽車道から,ツタの絡まった姿を見せていた大きな倉庫(これは戦後の建物)は既に解体が終わっています.新しいものを作るには,壊されるものが必要なのでしょうが,そんな中残され保存されるものがピックアップされる,その選択基準・論理はどのようなものなのでしょう? それ(残すという意志)は誰の意志なのでしょうか? そういうことについて考える素材にも,今回の座談記事はなるでしょう.
北仲WHITE解体 080618


*北仲・帝蚕倉庫の再開発前の姿から,解体のプロセスについては,こちらで,写真で記録してきています.



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ヨコハマ路地博’08,イセブラ・ナイト,フランス月間

今月行われるイベントをいくつか紹介します.

ヨコハマ路地博'08(6/22, @創造空間9001)


今回取り上げるものの中で一番,どんなイベントになるのか予想がつかず,興味を惹かれるのがこのイベントです.まず,その概要を引用してみます.
Speakers vibes(ウェアブランド)、flicker(雑誌)、mm films(BMX映像)というジャンルの異なる3団体の新作発表/販売を中心に行われる合同展示会。3団体のブース以外にも、普段親交/つながりのある ARTISTやSHOP、EVENTなどの出展ブースも設置されるので、ヨコハマを中心に活動する動きやつながりが目に見え、少なくともひとつは、新しい情報や出会いを持ち帰ることが出来るでしょう。また、当日はBMX DVD『on the low』の上映、DVD出演ライダーによるショーケース、ゆかりあるDJ/アーティストによるパフォーマンス、ライブペインティングなど、見所満載です!

横浜を拠点として,様々なジャンルでインディペンデントな活動をしている人達による,草の根的な合同イベントって感じでしょうか.活動紹介,制作しているものの発表・販売もあれば,音楽イベントやアートイベント的な要素もある.
私がこのイベント情報を知ったのは,参加される団体の一つflickerが数年前まで出していた,音楽や様々なオルナティブな文化的実践・活動を取り上げた,横浜発の横浜という場所を意識したフリーペーパー(団体名がタイトルとなっていた)を愛読していて,その後の情報も追っていたことからでした.このフリーペーパーが始まった2003年は,横浜でbankartなどの,街や都市を意識した文化・芸術系の活動が始まるよりも前で,その頃横浜に対して興味を持ちだしていた自分にとって,まず注目させられた活動が,このフリーペーパーの出版でした.そういうこともあって,その後のbankartやzaimなどを拠点とする活動の広がりに可能性や刺激を感じつつも,flickerのような活動と,bankartなどの活動がどこかの時点で接点をもたなければ,bankartというか横浜市による文化芸術振興・創造都市系の活動は,どこか変というか偏ったところがあるのではという考えを,これはなんというか一つの思い込みのようなものとして,抱いてきました(もちろん,市の流れなんかとは別に,それこそインディペンデントなかたちに,様々な活動があるのも一つの理想なんでしょうが).今回の会場は,廃止された東横線桜木町駅駅舎を転用したスペースで,創造都市政策の流れの中で整備された場所なので,先に書いた意味で「接点」をもったのかな,と思うところがあったわけです.flickerは今回のイベントで,「フリーペーパー時の「flicker」とは違った形の紙媒体「POST IT!」を始動」するとのことです.
こんな風なかたちに,参加される団体の活動の中に,一つでも興味を持てるものがあれば,とりえあずそれを目当てに(このイベントという「路地」に)立ち寄ってみる,で,もしかしたら他にも楽しめるものに,出くわすかもしれない,ぐらい感覚でフラッと参加するのもいいのかもしれません.イベント詳細や参加団体の紹介については,こちらのオフィシャルサイトで.

ヨコハマ路地博 '08


イセブラ・ナイト(6/26, @ザキ座)


急な坂スタジオのマンスリーアートカフェのvol.19として,「伊勢佐木カルチャーを巡る、イセブラ・ナイト」が開催されます.街歩きも行われるそうですが,その出発点となるのが「ザキ座」.伊勢佐木町の商店街=イセザキモールはとても(長さが)長いのですが,関内側の入り口から入って,有隣堂本店とか不二家とかを横目に歩いていけば,一度道路とぶつかります.そこを渡るとまたモールが続くのですが,ここから黄金町付近の終点まで(モールの全長の2/3ぐらい)と,大岡川に挟まれた地域(若葉町や末吉町)では再活性化活動が行われいて,その拠点となっているのが「ザキ座」です(住所は若葉町, 地図).伊勢佐木町はもともと「日本有数の映画館街・繁華街」だったわけで,そういう歴史を踏まえながらの再活性化が図られているようです.以下,イベントの概要を引用します.
今回のマンスリーカフェは、新たな活動拠点「ザキ座」を出発点に、実際に周辺を歩くフィールドワークも織り交ぜたトーク・ナイト。ゲストは、伊勢佐木を舞台にしたドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」の監督・中村高寛氏と、横浜にぎわい座の企画コーディネーター・布目英一氏。伊勢佐木カルチャーの過去と現在を知り尽くした二人に導かれながら、演劇・映画の劇場都市への再生に向けた様々なアイディアが交錯する一夜となるでしょう。

出演者のプロフィールやイベントの詳細についてはこちらから(予約が必要なようです).また,ザキ座についてはこちらにスタッフの方のblogがあります.


ザキ座



※これより下の三件は,横浜フランス月間の関連イベントです.横浜では,2005年から6月がフランス月間に指定されて,様々なイベントが行われています.もともとは,1993年からフランス映画祭が同じ月に横浜で開催されていたが,こちらは2005年を最後に他所に移ったそう(参考).そういう中でも,いくつかはある映画関連のイベント(上映会)二件と,都市をテーマにしたアートの展覧会のイベントを紹介.

ストローブ=ユイレ『セザンヌ/ルーヴル美術館訪問』上映会(6/18, @慶應義塾大学・日吉キャンパス)


情報が掲載されている個別ページがないので以下全文引用しておきます(こちらより).
教養のための連続映画上映会2008:ストローブ=ユイレ『セザンヌ/ルーヴル美術館訪問』
主催: 慶應義塾大学表象文化論研究会
日時: 6月18日(水) 18:15~20:30
会場: 慶應義塾大学 日吉キャンパス
来往舎シンポジウムスペース 地図
交通アクセス: 「日吉駅」下車(徒歩1分)
料金: 無料
TEL: 問い合わせはメールにて:kei-s@df7.so-net.ne.jp

慶應義塾大学表象文化論研究会では、毎年、日吉キャンパスにて映画上映会ならびに映画監督を招いてのシンポジウムを開催しています。2008年度は、映画とアート、そして映画と戦争をめぐる上映会を企画。6月の横浜フランス月間に際して、現代映画を代表するジャン=マリー・ストローブとダニエール・ユイレがセザンヌに注視した『セザンヌ/ルーヴル美術館訪問』をDVD上映する予定です(『セザンヌ』については部分上映予定)。
ルーヴル美術館を訪れた画家セザンヌがなにを見て、なにを考えたのか、ジョアシャン・ギャスケの著書『セザンヌ』を参照ポイントとして描出しようとしたストローブ=ユイレ。絵画をめぐる稀有な映像体験をお楽しみください。なお、上映の前後に、作品についてのレクチャーを行います。


もうひとつのフランス映画(6/20, @東京芸術大学馬車道校舎)


イベントの概要は以下の通りです(詳細はこちらで).ちなみに,結構コンスタントに行われているらしい,横浜日仏学院が関係する映画の上映会については,はがきサイズの告知のちらしを,bankartやzaimなどのスペースで見かけることが多いです.このイベントもそうですが,横浜日仏学院と近距離にある馬車道の芸大院映像科との連携も行われている模様.
新企画「もうひとつのフランス映画」   
主催: 横浜日仏学院
日時: 6月20日(金) 19:00
会場: 東京芸術大学馬車道校舎 地図
交通アクセス: みなとみらい線「馬車道駅」 下車すぐ
料金: 会員600円、一般1,200円(芸大生無料)
TEL: 045-201-1514

講師:スティーヴン・サラザン(逐次通訳付)

ヌーヴェル・ヴァーグの影に隠れてしまった、仏国民が愛し、トリュフォー等の監督たちも愛した、これまで語られることの少なかった「もうひとつのフランス映画」をご紹介します。

『ファントマ:危機脱出』 FANTÔMAS
(フランス/1964年/105分/DVD/カラー/日本語字幕)
監督:アンドレ・ユヌベル
出演:ルイ・ド・フェネス、ジャン・マレー、ほか怪盗ファントマとパリ警視庁のジューヴ警官とのポップで愉快な作品。


bashamichi


「感性のメタモルフォーズ―私のなかの都市」展・ラウンドテーブル(6/22, @横浜市民ギャラリーあざみ野


開催中の展覧会の参加アーティストに加え,建築家,批評家が登場するラウンドテーブル.「都市環境をテーマに、分野を超えた議論を展開」.出演者は以下の通り.
・モデレーター:金子文子(CIEL ROUGE CREATION代表/アーティスト)
・ゲスト:ヴィルジニー・ラヴェ(本展参加アーティスト),アンリ・ゲイダン(建築家),石上純也(建築家),港千尋(美術家/著述家)

本展覧会+イベントについての詳細はこちら


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【写真レポート】横浜・三つのホテル計画

先日の記事「横浜「ホテル戦争」? 横浜のホテル事情」で,横浜に三つの高級ホテルが進出してくること,また横浜都心部に立地する,既存のホテルの分布やその種類についてお伝えしました.今回の記事では,新たに進出する三つのホテルが(あるいはホテルが入る建物が)計画されている場所のについて,写真でレポートしてみます.同じように高級ホテルといっても,それぞれが立地する場所は,その性質も現状もかなり異なるようです.(高級)ホテルだなんて,「ホテル戦争」だなんて知んねーぞ,って人も是非どうぞ.

パークハイアット横浜(北仲通北地区)


「パークハイアット横浜」は,森ビルによる再開発ということで話題になってきた,北仲通北地区(A地区)に建設される超高層タワー(高さ200m,地上50階)に入るということです.北仲通北地区の再開発には,大和(だいわ)地所も関わっていますが,この超高層タワーは森ビルが担当する旧帝蚕倉庫の敷地内,A-4地区に位置します.ホテル以外の用途は,集合住宅・事務所・商業施設・専修学校,となるそうです.完成予想図はこちらのpdfで見られます(少し古い情報なので現在の計画とは異なる点があるかもしれません).現在,現地では,既存の旧帝蚕倉庫の建物(歴史的建造物を含み,一部は保存活用される)の解体が終盤に入っています.

北仲通北地区(A地区)再開発

北仲080602a

北仲


※参考:北仲通・帝蚕倉庫の解体前の様子,解体のプロセスはこちらでレポート中.


W Yokohama(みなとみらい21新港地区4街区, 赤れんがパーク向かい)


先の北仲通は写真でも分かるように,関内の中でも海側に位置します.そこから海岸通を経て,万国橋を渡ると新港地区になります.「W Yokohama」が計画されているのは,その新港地区の奥,海に面した区画です.その先には,先日その建設の模様をお伝えした新港ピアや,海上保安庁の施設があります.このホテルは,今回取り上げる他の二つが高層ビルの中に入るという計画であるのとは違って,ホテルがメインとなる開発として,地上八階の低層の建物(用途:ホテル・店舗)として建てられるそうです.完成予想図はこちら(pdf, p.19),開発に関するリリースはこちらで見ることができます.現地の現状は,ある意味みなとみらいや新港地区を構成する典型的な風景の型の一つとなってきた,開発・計画や工事の開始を待つ更地の状態です.何年前からこの状態なのかは分かりませんが,以前は新港地区ですからもちろん港湾関連の施設があったのでしょう.


新港地区4街区 [1]
奥の白いフェンスで囲まれている部分が敷地

新港地区4街区 [4]
左に見えるのが新港ピア

新港地区4街区 [3]
赤レンガ倉庫が見える

新港地区4街区 [2]
みなとみらい方面を臨む


ホテルニューオータニ(みなとみらい21地区28街区, JR桜木町駅前)


さて,最後の「ホテルニューオータニ」が入るのが,桜木町駅とみなとみらい地区を繋ぐ動く歩道とJRの高架の間に広がる敷地に現在建設されている,19階建ての建物(用途:店舗・シネマコンプレックス・ホテル・フィットネスクラブ・オフィス).こちらで完成予想図が見られますが,高さよりもゆるやかな曲線を描く横への広がりが特徴的な建物が,現地では既にその姿を見せ始めています(動く歩道の脇からダイナミックな工事現場をじっくり見ることができます).この場所は,他の二つの場所に比べて,現時点での人通りが抜群に多いところです.そのことが,ホテル(高級ホテル)にとってどう働くのかは分かりませんが,上にホテルがあることなんて知らずに商業施設やシネコンを利用する多くの人々のことは容易に想像できます.


みなとみらい 28街区 [1]
桜木町駅から動く歩道までの広場の部分から見上げる

みなとみらい 28街区 [3]
動く歩道側から

みなとみらい 28街区 [4]

みなとみらい 28街区 [5]
桜木町駅とみなとみらいの間の大きな道路を渡った辺りから.左に行くと北仲の再開発地区に出る.

みなとみらい 28街区 [6]
汽車道から

みなとみらい 28街区 [2]
再び動く歩道側から


この写真のみ,2005年8月の撮影.この草ボウボウな部分が今回の敷地


三つの場所を訪れてみて


以上,三つの場所について簡単にレポートしてみました.新港地区の物件についての記述の中で,空き地状態を,みなとみらい・新港地区の風景を構成する型の一つと書きました.みなとみらいや新港地区では,そういう空き地を横目にしながら目的の場所へと歩いていく,という体験を多くの人がしていると思います.三つ目に取り上げた,工事が始まっている桜木町の敷地にしても,一時的にマンションギャラリーのような仮設の施設が建った時もありましたが,基本的には長い間空き地でした.毎日毎日膨大な数通り過ぎていく歩行者の中に,あそこにあんな建物が建つことになるとを想像していた人はどれくらいたでしょうか.それでも,みなとみらいの開発が始まった時から,あの区画は商業ゾーンと指定されていて,いつかは開発が行われる土地として存在してきたのです.当時のマスタープランを見れば,ちゃんとあの敷地に建物の絵が描かれている(もちろん今建ち上がりつつある建物とは似ても似つかないポンチ絵ですが).そして,10年が経ち,20年が経とうとしている現在,というわけ.横浜博(1989年)の写真を見ると,この桜木町駅前の敷地は,この時も空き地だったのです.前にそこに何があったのか分からないような状態になってからもう結構な時間が経った.対して,一つ目に取り上げた北仲の件に関しては,今まさに更地状態をつくるために,元々あったモノが解体されていっているので,新しい建物が建てられるというプロセスがまた違った形で見えてきます(といっても,北仲に関しても計画が持ち上がってから何年も経ってはいます).今回載せた写真を一度に見られるスライドショーも用意したので,工事中・解体中・更地,という都市の三つのコンディションを意識しながらもう一度眺めてもらえばと思います=スライドショー

(※ところで,ホテルの話しはどこに行ったのか? 以下,補足的テキストを少しだけ:私がホテル・高級ホテルに馴染みがないから,そこまで話しがたどり着かなかったということもあります.が,この記事を執筆するにあたって現地を訪れてみても,新港地区に位置するもの以外の二件は特に,そこにホテルが進出するということを,リアリティを持って捉えられなかったというのが正直なところです.ホテルというものが都市を構成するものの一つであることは確かですし,都市をかたちづくるにあたって,このようにホテルというものが組み入れられているわけなんですが,この組み入れるという感じがくせものに感じます.つまり,複合的な建物の一要素として,その高層部にホテルが組み込まれる,というようなかたちで,それが横浜に「高級ホテルが進出!」ということになる.もちろん,そのようなホテルを利用する人の視点から書けば,どのような部屋になるのだろうか?とか,どのようなサービスが提供されるのだろうか? というようなことも出てくるのでしょう.または,どのようなお客さんが来るようになる? とか,そのお客さんが周囲のどういう場所に行くだろうか?とか考えることもできるのでしょう.しかし同時に,都市の中に何か新しいものができるということを捉える時,それを直接利用しない人にもどういうインパクト・影響・景色を与えるだろうか考えてみる,というのも一つの方法だと思います.このような視点からでは,今回の件はどんな風に捉えられるでしょうか? 横浜にある,それぞれオープンした時代の違う,他のホテルはどうでしょうか?).


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横浜「ホテル戦争」? 横浜のホテル事情

2007年は東京都心部に多くの外資系ラグジュアリーホテルが進出し、「ホテル戦争」と呼ばれましたが、東京がひと段落したのも束の間、その舞台が横浜に移され展開することになりそうです。今回は、その横浜のホテル事情をまとめます。
横浜・ホテル競争の激化の背景には、以下の高級ホテルの進出が報じられたことが挙げられます。

パークハイアット横浜(北仲通北地区)
W Yokohama(みなとみらい21新港地区4街区, 赤れんがパーク向かい)
ホテルニューオータニ(みなとみらい21地区28街区, JR桜木町駅前)

パークハイアット横浜は、六本木ヒルズのグランドハイアット東京などを展開するホテルチェーン「ハイアットホテルズ アンド リゾーツ」、W Yokohamaはウェスティンホテルやシェラトンなどのブランド展開をする「スターウッド・ホテル&リゾート」が展開。加えて日本国内のホテルとしては、ホテル御三家のひとつ、ホテルニューオータニが横浜に進出します。
横浜、特にみなとみらい21地区にはヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル、横浜ロイヤルパークホテル、パンパシフィック横浜ベイホテル東急という高級アーバンリゾートホテルが既に立地しているため、これらのホテルとの競合が予想されますが、一昨年の市長定例記者会見(平成18年2月22日)では次のように語られています。

記者: (みなとみらい21地区には)既に「高級と言われるホテル」が3つありますが、それらとの競合などの点は、審査の過程で議論にはなったのでしょうか。
市長: みなとみらい21地区には、これから先、さらに人が集まることが想定されています。(以前、事業予定者として決定し、その後)立ち消えになってしまいましたが、(この地区の)別の場所でホテルの提案があったりしました。そうした意味では、ホテルについては以前から(民間事業者の)進出意欲があります。つまり、進出する側からすると、商売として成り立つエリアなのでしょうから、それは民間事業者の皆さんにお考えいただくことです。我々としては、まさに業務核都市になってくる、あるいは、エンタテイメントで人が集まるという意味では、全体として、そうしたホテルも含めた構成については歓迎するところです。

ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル

冒頭で触れた東京のホテル戦争の背景には、東京都心部の不動産市場の活況という供給側の事情と、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」等による来日者数の増加などによる需要側の事情の両者の合致があったと考えられています。しかし現在、このように展開してきた高級ホテルの稼働率が落ちているという報道もなされ、先行きは不透明と言わざるをえません。

とはいえ、これらの高級ホテルが横浜に展開すれば、横浜の地図が新たに書き換えられるのは間違いありません。あらためて、地図上にプロットしてみます。(なるべく網羅的に扱っていますが、横浜駅~山下公園の首都高周辺と、それより海側の地区についてまとめました)



黄色い印が今後展開される高級ホテル(シティホテル/アーバンリゾートホテル)、青色が、宴会場などを併設するシティホテル/アーバンリゾートホテル、赤色が、宿泊に特化したビジネスホテルです。
このように見ると、みなとみらい21地区へのシティホテル/アーバンリゾートホテルの展開と、関内地区へのビジネスホテルの集積が見て取れます。山下公園のエリアもシティホテル/アーバンリゾートホテルが見られます。つまり、みなとみらい21や山下公園のエリアのホテルではブライダルや宴会などの需要があることが想像されますが、新しいホテルの進出は、みなとみらい21地区におけるこうした傾向を推進するものと考えられるでしょう。また、パークハイアット横浜が北仲通へ――という流れは、ランドマークタワー・クイーンズスクエアと赤レンガ倉庫をそれぞれ基点とした商業・ホテルなどのエリアの拡大(あるいは移動)とも考えられるかもしれません。
ホテルの分布だけで判断するのは早計でしょうが、冒頭で挙げた3つのホテルの進出により、みなとみらい21と関内地区という隣接する二つのエリアの個性の分化がさらに明確になるようにも思えます。

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・関連記事:【写真レポート】横浜・三つのホテル計画
今回取り上げた3つのホテルの2008年6月における状況の写真レポートです。


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トリエンナーレ・メイン会場「新港ピア」建設中

今秋開催される横浜トリエンナーレの会場の一つとなる「新港ピア」(新港ふ頭仮設会場)が現在建設中です.今回の記事では,この建物について紹介します(最後に建設状況の写真レポートあり).


建設中の新港ピア

赤レンガ倉庫などがある新港ふ頭(新港地区)の海側には,二本の岸壁が海に向かって伸びています.(海に向かって)右側の岸壁には海上保安庁関連の施設があり,今回取り上げる新港ピアは,もう一方の左側の岸壁に建設されています.こちらの岸壁には,もともと新港客船ターミナルがあったのですが,市の創造都市政策の一環で「新港客船ターミナル映像文化施設」として2005年から2006年にかけて整備・改修され,東京芸術大学大学院映像研究科新港校舎が入居しています.新港ピアはこの施設に隣接するかたちで建設されています.






新港ピアの完成予想図は次の様になっています(以下,新港ピアについての引用はこちらより).



右側の四つの箱からなるのが新港ピアで,左奥のが新港客船ターミナル映像文化施設ですね.手前に見える,白い施設は既に現地で見ることができエントランスのようにも見えますが,今回の整備に会わせて建設されたものか,以前からあったものかは不明.

新港ピアの整備期間,施設概要,設計者については次の通り.
【整備期間】 20 年4 月~8 月
【施設概要】鉄骨造平屋建、延床面積約4,400 ㎡
【設計】㈱松本陽一設計事務所

ちなみに,客船ターミナルの改修の実施設計を行ったのは日生建築計画研究所.改修後の様子については,こちらに写真があります.この写真からはよく分かりませんが,もともとの客船ターミナルは昭和4年の建物だそうです.改修完成時の横浜市長の会見でそのことが触れられているので引用してみましょう(こちらから.改修にかかった費用の話しもあります).
記者 この客船ターミナルを直接知らないのですが、これ自体は何か歴史的な建物なのですか。
市長 昭和4年から(の建物です)。
記者 結構古いですね。
市長 かつては横浜のメインターミナルとして、長い間使われていた歴史があります。
記者 現在の建物は、昭和4年にできたものが大枠で残っているのですか。
(事務局) そうです、それを大幅に改築しました。



さて,新港ピアに話しを戻しますと,この建物がトリエンナーレで使用される時の会場空間構成は西沢立衛建築設計事務所が担当するそうです.トリエンナーレの主催団体の一つである国際交流基金が発行している機関誌「をちこち」(no.20)に掲載された,水沢勉(横浜トリエンナーレ2008総合ディレクター)と西沢さんの対談ではこの会場について次のように語られています.
西沢:今回,横浜トリエンナーレの仮設の建物は,すごくいい場所にできますね.
水沢 新港ふ頭で,馬車道通の軸線ですね.文化的な施設が都市の軸線上にできるのはすごく意味があると思います.
西沢 関内の道路はいわばグリッド状にはりめぐらされた格子状道路網ですが,実際はそれだけではありませんね.馬車道通のようなグリッドに収まらない,強烈なキャラクターをもった通りもある.馬車道には歴史があって,そこから先に行くと新港ふ頭,つまり新しいふ頭がある(建設は明治時代後期から大正時代).その先端に建つ建物ですから非常に重要なポジションに建つ建物といえます.フランス人だったら大変特別な建築を建てるような所ですね.
水沢 確かに関内から馬車道通を通って,一気に海に向かっていくわけですから,ある意味で,それが横浜の都市の形成に関わる,一番明瞭な軸線ですね.新港ふ頭はトリエンナーレのあと,2009年には「開港150周年記念事業」の会場になりますが,そのあとはさらに開発が進むでしょう.

この後,西沢さんは横浜のまちづくりの中で,海際がパブリックな場所として市民に開放されてきた流れについて語っています.かなり時代をさかのぼる山下公園の整備から,みなとみらいの整備まで.前回のトリエンナーレの会場が置かれた山下ふ頭も普段は一般人は立ち入れない場所でしたし,今回の岸壁もフェンスで仕切られていて入ることができない場所です.
馬車道と新港ピアの位置関係は是非,こちらの地図で確かめて見て下さい.



☆写真レポート
2008年6月初旬の,新港ピアの建設状況についての写真レポート=「新港ピア・建設中」(写真20枚)






☆関連
・同トリエンナーレでは,BankART Studio NYKも会場となります.それに向けてのリノベーションについて取り上げた記事=【レポート】 Renovation Project vol.3
・追記 [ 6.12.2008 ]:トリエンナーレの公式blogに,この会場についての紹介記事がアップされた=こちら




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